Mリーグ観戦記「Mリーグ今日の1局」のコーナー。
Mリーグを観戦したその日、最も印象に残った1局を振り返り、Mリーガーたちの打牌意図や、その局のオモシロポイントを(勝手に)検証していきます。
本日2019年10月15日の名局は、間違いなくあの局でしょう。
高宮の気が狂ったかのような猛烈な押し、石橋の歯を食いしばった粘り、たろうの解説と打牌の掛け合い
実に見どころだらけで興奮が止まらない一局がありました。
Mリーグ観戦記 2019年10月15日 第一試合 南3局0本場
Mリーグ観戦記 今日の1局は、第一試合 南3局0本場です。
配牌と各選手の状況
配牌と各選手の状況はこちら。
東家 松本吉弘(渋谷ABEMAS) … ピンフ系の1メンツ+2両面。赤含みのドラ受けターツもあり、あがればトップまで狙える勝負手。
南家 石橋伸洋(U-NEXT Pirates) … 字牌トイツ×2+ピンズで1メンツ完成。ホンイツまで持っていきたい手配。3900以上をあがってオーラスを迎えたい。
西家 高宮まり(KONAMI 麻雀格闘倶楽部)… ドラ3と役牌トイツ。他部分の形はそこまでよくないが打点十分。あがりきればトップがほぼ確実に。
北家 茅森早香(セガサミーフェニックス)… 一萬アンコがあるくらいで、目一杯には構えたくない手配。横移動でも御の字か。
序盤の展開
まずは石橋が親の第1打の發をポンして打6m。
本線はホンイツ役の3900または5200。役牌もう1つ or チャンタ or 赤絡みで満貫になれば最高。次点でドラ絡みの2000点からワンチャン赤5ソー絡めて3900以上 の形になってもOK。という狙いがみえる。
この配牌と状況では、この狙いが最も現実的かつ高期待値だと思われる。
さらに高宮の第一打の東もポンして打6ソー。
これは声が出ない打ち手もいるかもしれないが、①①②③と北で頭候補も十分なこともあり、これが最速手順か。
打牌意図は打6mのときと基本的に変わらず。瞬間的には6mよりは赤5ソー引きも見て6ソーを残したが、ここから仮に赤5ソーを引いても打点重視のカン4ソーで十分なので6ソーはほぼ不要と考えられる。
また、この場面は鳴かれた側もごく自然な1打であった。
松本はピンフ系なので役牌から、高宮はドラ3+役牌系なのでオタ風からと教科書通りの一打である。
石橋は4ピン引きで、カン2ソーの2000点聴牌も取れたがとらず。
巡目と場況的にもまだ打点を追ってよいと判断し、当初の構想を継続。
おそらく2ソー先引きだけはテンパイ取ったであろうと予想される。
次の3ピン引きでホンイツに決め、3ソーを外す。
ぶつかり始める中盤
高宮はここでションパイの中をプッシュ。
たろうは「8000や12000と言われてもおかしくない牌ですが、強くいきましたね」と解説していたが、実際このプッシュがどうだったのか考えてみよう。
この場面で高宮は、石橋に字牌とピンズの余りがまだないことや、手出し13ソーの順番などから、まだ1枚余りの1シャンテンのケースが高確率だと読んで、鳴かれたら降りるつもりで先切りしたのかもしれない。
一応その原理を説明しておくと、
中中②③北北3 や 中中②③⑦⑧3 のようなホンイツの十分形なら3ソーより1ソーを残すはず。(この場合はホンイツなのでターツは両面でなくても成立)
中中②③④⑦X こういうくっつき形でもホンイツ一直線なら3ソー⇒1ソーになる。
ただし、くっつきのケースは「ホンイツ一直線」である前提でしか成り立たないので、今回のようにドラくっつきと天秤をかけていた場合は成立しない。
また、ホンイツ以外の高打点だと、ダブ南やドラトイツだが、こちらも両方自分で抑えているので確率が低い、という読みもあったか。
結果、「中があたりになるのはレアといえばレアだが、読みが成立しないケースもそこそこある」程度なので、この場面は読みと心中というよりは、状況や手配が見合うかどうかで決めるべきだろう。
では、状況と手配はどうか。
リャンシャンテンで⑧ピン、南、ドラのうち2つを持ってこなければ上がれないこの手、ラス前トップ目ということも踏まえるとちょっとやりすぎかなと思う。点差的にもマンツモされてもトップ目でオーラスを迎えられるのでさすがにオリ優位か。
石橋はここで6ピンをツモ切り。
この選択にたろうはかなり驚いていた。
「北単騎を強く意識しているのはわかりますね。しかし⑦⑧引きのロスは痛い」
たしかにこういうとき、ロスの方で痛い目を見るイメージが強い。
が、北残しの選択も悪くない。
メリットとしては、
・①ポンのとき待ちが悪くない+打点が5,200に上昇
・③のダブリがあるのでロスの枚数もそこまで大きくはない。(⑦なら残したはず)
・状況的に100%押してくる松本と、中を押してきた高宮への準安パイとして
といったところか。
そして松本の3ピンをポンしてカン3ピンのテンパイ。
これもなかなか声が出にくいが、ポンカスとはいえ瞬間5200のテンパイは偉い。
さらに①②④の縦引き、①ポンで満貫に打点上昇&待ち枚数も増えるので十分だ。
ただよく考えると、手替わりはないが瞬間のアガリ牌が多いぶん、チーして①③待ちの方が良い気もしたんだが、どうなのだろうか。
ここで高宮はさらに南をプッシュ。
この押しもやりすぎに見えたが、自身が2枚持っている以外にも読み要素があったのだろうか?
インタビューで「そんなに押してましたっけ?」と言っていたのは、自信のある読みから来るものなのか、適当なのか、はたまた感性なのか。
おそらくは自身のアガリ可能性が最も高いであろう打牌をしたと思われる。
そして高宮は首尾よく役ありのテンパイを入れる。
これ、一萬引いたらどうしたのかが気になる。
3ソーの残り期待値は0.7枚くらいか。
石橋…確定0
松本…2ソー切りから少なめだがドラ受けなので223からの先切りも十分あり
茅森…索子下はXだが、ベタオリなら切ってそう
親リーチ、そして高宮の怒涛のプッシュ
終盤に入ろうかというところで、遂に松本から十分形のリーチが入る。完全なる殴り合いの始まりだ。
親リーチが入っても一切降りる気なしの高宮
ワンチャンスは安パイですと言わんばかりのリーチ一発⑧プッシュ。
ションパイの9ピンもお構いなし。(ちょっとぷるってはいたがw)
2ピンの手出しをみて、⑨はないと読んだ??
いや、そもそも松本にも⑥⑨通ってないし関係ないかw
「なんで俺だけツカむねん…」とつぶやきたくなる4ソーツモで石橋ギブか。
安全度は⑤の方が高いが、粘りも考慮して①トイツ切りを選択。
そして高宮は、松本にド本線の二五萬もプッシュ!!!
たろう「二五萬は残ってる筋の中でも濃い筋なんですよねぇ。これは切れなそうな気がしますねぇ。」
…
バシッ!!
高宮「マンズは切りやすかったんで(キリッ」
今までの押してきた牌たちは、もしかして俺にはわかっていない高度な読みが入っていたのかと恐れていたが、そんなことはなさそうですね(笑)
最後は石橋の渾身の粘りが実り、ドラ裸単騎のテンパイが取れて流局。
茅森もワンチャンのテンパイを目指して仕掛けを入れたがテンパイはとれず、3人テンパイとなった。
感想
圧倒的なThis is 麻雀感と、それぞれのキャラクターとストーリーがあふれる名局だった。
昨年よりもスッキリとした様子で堂々と打つ姿に注目が集まる高宮プロ。
勝利者インタビューでの「鼻水が出てたので上を向けませんでした」発言も、お茶目さ全開でファン急増の予感だ。
今後もその強気の麻雀で魅せてくれることを期待している。
※ 牌譜はトガシの麻雀X研究所 様からお借りしました。